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写真日記


1年間、お世話になりました

ホームで過ごす夜も、今夜がいよいよ最後となってしまった。いつもと同じ夕飯の食堂の風景。ホームではタイの慣習にならって、普段、子どもたちと大人は別々のテーブルで食事をとる。しかし今日、ただひとつ違ったのは、スーがふらっとやって来て、「今日はポー・ヨーと一緒に食べよう」と僕の前の椅子に腰を下ろしたことだ。それにつられてか、シントーとポンもやって来た。そして食事のあとにはナットが「今、ギターを持ってくるから。ちょっと待ってて」とだけ言い残すと、ギターを脇に抱え、小走りで戻ってきた。ギターを手にしたナットは「ポー・ヨー、あの歌だよ、歌えるでしょ?」と言うと、僕の大好きなタイの歌を弾き始めた。

送別会をしてくれたり、子どもたちとの会話の中で帰国の話が少しでも出たりすると、いよいよ自分が帰るのだなあと実感させられる。まだまだあると思っていた時間も、こうなると無情なほどに早く過ぎ去り、いくらあっても足りないような気さえする。

これまでボランティアのボの字もなかった僕にとって、「海外で1年間のボランティア」というのはなんだかものすごく特別なことのように思っていた。また、自分はそんなことをする下地のない人間だとも思っていた。しかしホームで過ごした1年間は、僕の想像を良い意味で裏切るものであり、肩肘張った堅苦しいことは何もなく、ただただ普通の生活と普通の仕事がそこにあった。「ボランティアで社会貢献と人助けしています!」といった、必要以上に気負う感情が生まれてくることも一度もなかった。それよりも、ここでの仕事や、子どもたちとの触れ合いを通じて学んだことがたくさんあり、また、ここにいる日本人スタッフやタイ人スタッフが僕のことを温かく受け入れてくれ、その絆を深められたことに、自分は何と良い縁と運に恵まれたのだろうとただ感謝するばかりである。そして、そんな思いが強くなるにつれ、ホームのみんなとの別れがますます辛くなるのもまた事実である。

何かの縁があって、この1年間、バーンロムサイの一員として働けたことを僕はとても誇りに思う。そして同じく、縁あってホームにいる31名の子どもたちが「バーンロムサイに来られて、自分は幸せだ」と少しでも思っていてくれたら、ホームに関わっていた者としてはこの上なく嬉しいことである。僕がこうしてホームに来たのが、自分自身で全く想像し得なかったのと同じように、5年後、10年後・・・ここにいる子どもたちが将来どうしているのか、何をしているのか、きっと誰にもわからないことだろう。これから子どもたちがどんなふうに成長していくのか、とても楽しみである。そして自分のことを「ポー(お父さん)」と呼んでくれる世界で唯一の子どもたちが、いつまでも健康で幸せに暮らせることを、僕は願いたい。(写真は手前がゲン、奥がパヌ)

小宮 陽之助|2009/05/21 (木)

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